人暮らす
ふたりのキーパーソンが語る「綾部未来図」
塩見 直紀
半農半X研究所代表
「安全な農作物を自ら育てる半自給的農業と、それぞれがやりたい仕事に向き合い、両立させる生き方」。綾部から発信するライフスタイル「半農半X」が、今の時代に強く響いている。
原田 直紀
有限会社原田商店代表
空家となった綾部の古民家を移住希望者に格安で提供する古民家再生の第一人者。2015年には一流の菓子職人を招聘し、パティスリーを開業。人材育成の視点でスイーツ教室も行う。
Iターン移住者を中心に、綾部を新天地とした人々を取材してきた「綾部田舎生活コラム」。 毎号の案内役は「半農半X」提唱者の塩見直紀さん。当企画に協賛し、支えてくださったのが 原田商店社長の原田直紀さん。今回は古民家ならぬ、古教会が取材の舞台。 ふたりの直紀さんに、綾部の未来図を聞いた。
原田 ここは60年前に建てられたカトリック綾部教会です。地域の教会が統合されることになり役目を終えましたが、ご縁があって原田商店が買い上げました。この素敵な建物を壊さずに、 どう活用するか考えています。
塩見 古民家再生と同様に、価値のある建築物 (ハード)を残して、新たなソフトを組み入れる。 またひとつ、綾部のまちづくりの好例になりそうですね。
−どんなソフトができそうですか?
原田 綾部にはまだない映画館やコワーキングスペースも面白そう。地元ラジオ局の公開放送やコンサートなどイベント会場としても使えそうです。
−人が集まる場所をつくるのが原田さんなら、塩見さんは20年以上前から半農半Xという生き方を発信していますが、最近の綾部の変化についてはどう感じていますか?
塩見 この 10年、綾部で実に多くのIターンが実現し、自分でも把握しきれないぐらいです。このコラムでも現役世代や若者を多く取材してきたように、半農半Xが今の時代にタイムリーな考え方であることを実感しています。
−これからの綾部にとって必要なことは?
原田 塩見さんのメッセージに共感し、古民家で田舎暮らしを始めた方々に、半農半Xの進化形をつくっていってほしい。それが綾部の文化度をさらに高めると期待しています。
塩見 綾部市が原田さんたちと一緒に行った取組みの成果で、子育て世代の移住・定住が増えました。綾部で育った子どもたちが、やりたいことを実現するための教育と実践の現場をたくさん作って、地元のために働きたいと思える町にすることがこれからの課題だと思います。
原田 やっばり、人が大事。人材を育てることこそが、町おこしの肝ですね。
1957年築の綾部カトリック教会。 2015年1月、カトリック京都司教区の福知山と報恩寺、綾部の3教会の統合によって、半世紀以上にわたる布教の役目を終えた。 近くには、綾部発祥の宗教教団「大本」の聖地や、綾部が創業の地であるグンゼの本社がある。綾部の文化の中心地に建つ歴史的建造物だ。
綾部のここがすごい!がわかる、今話題の1冊
驚きの地方創生「京都・あやベ スタイル」(扶桑社新書)864円
塩見直紀さんがホスト役を務める綾部のご当地FM番組で、山崎善也綾部市長と、地域振興のスペシャリスト・藻谷浩介氏が対談。トーク内容を題材に、地方創生の先進都市として注目を集める綾部の秘密を解き明かす。
(ハンケイ500m 綾部田舎生活コラムより)